2010年8月21日土曜日

九十九里町手記(28)

【平成22年08月21日】
今年の夏は、連日猛暑日(1日の最高気温が35℃以上の日)となる暑い
夏になりました。

その影響もあって、ブログの更新も滞っていましたが、幸い昨日辺りから
凌ぎ易くなってきたので、ようやく落ち着いて机に向かうことができる
ようになりました。

前回、九十九里町中央公民館のことに触れましたが、ここでちょっと
驚いたことがありました。
と言いますのは、高村光太郎さん直筆による一編の詩が、ひっそりと
展示されていたからです。

「高村光太郎」と言えば、私には「智恵子抄」しか思い浮かびませんが、
どうして高村光太郎さんの詩が先の公民館に展示されているのか不思議
に思いました。

幸い、私の手元には学生時代に読んだと思われる「智恵子抄」が残って
いたので、今回と幾つかの番外編に分けて、その辺りの事情をご紹介
したいと思います。

「千鳥と遊ぶ智恵子」

人つ子ひとり居ない九十九里の砂浜の砂にすわって智恵子は遊ぶ。
無数の友だちが智恵子の名をよぶ。
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい―
砂に小さな(足)あとをつけて千鳥が智恵子に寄つて来る。
口の中でいつでも何か言つてる智恵子が両手をあげてよびかへす。
ちい、ちい、ちい―
両手の貝を千鳥がねだる。
智恵子はそれをぱらぱら投げる。
群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ。
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい―
人間商売さらりとやめて、
もう天然の向うへ行ってしまった智恵子のうしろ姿がぽつんと見える。
二丁も離れた防風林の夕日の中で
松の花粉をあびながら私はいつまでも立ち尽くす。

昭和12年(1937年)7月

― 新潮文庫 智恵子抄より引用 ―

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